キミの目に僕はもう映らない
脆く儚い
次の日、侑也が目を覚ますとまだ昌美からLINEは来ていなかった。「おかしいな」と思いつつも侑也は普段通り「おはよ」とLINEを送った。そこから彼は準備を済ませると学校に行った。学校の3時間目も終わり、あと1時間でお昼休憩になるというのにまだ昌美からの返信は無い。
侑也は少し疑問に感じ、「何かあった?」とLINEを送った。その後も返信が無いまま時間は過ぎ、すでに放課後になっていた。侑也はバイトまでの道のりを歩きながら少しイライラしていた。
「何でなんにも返してくれないんだよ!」
そんなことを考えながら歩いていると後ろからマサシが声をかけてきた。
「オイ!侑也!」
侑也が振り返るとマサシは走ってきたのか息を切らしている。
「どうしたんだよ。」
侑也はマサシのほう少し冷たく見ながら言う。
「いや、最近ダブルデートもすること無くなったし、お前ら順調なのかなと思って」
そう言うマサシに侑也は少し笑みを浮かべて
「順調だよ」
そう言った。ただ、まさに今順調ではない状況を感じていた侑也はマサシから避けるように「俺バイトあるから急ぐわ!」とだけ言ってその場を足早に去った。マサシはそんな侑也に少し違和感を感じたものの声を掛けられないでいた。
その夜、バイトが終わった侑也はスマホを開いてすぐにLINEを確認する。
「まだ返事が無い・・・」
徐々に彼の不安は大きくなっていた。
「もしかして・・・」
そう思った侑也は昨日美奈子だと思って間違って昌美に送ったLINEを見た。
「もしかして・・・コレ?」
すぐに侑也は昌美にLINEを送った。そのLINEには「間違えてLINEを送った相手はオンラインゲームで知り合った女性」であること、「ただの友だち」であること、「会ったことが無い」ということ、「浮気ではない」ということなど、とにかく正直に謝った。
「怒ってるよな」
そう思い侑也は自分がしたことを悔いた。ただ、彼の中にはどこかで「たかがLINEを送る先を間違えただけ」、「言えばわかってもらえる」といった思いがあった。だが、それでも昌美からの返信は無い。
「会いに行って話を聞いてもらうか」
そう考えるも怒っている時に無理に「話を聞いてくれ」というのはどこか気が引けた。自分がバカなことをして怒らせたのだ。とりあえず彼は昌美からの反応を待つことにした。
ただ、次の日になっても、またその次の日になってもLINEは来ない。侑也はついに昌美の家まで足を運んだ。まだ、「話し合えばわかる」と希望を持って。
昌美の家の前に着いた侑也は昌美の自転車があることを確認して電話を掛けた。いくら鳴らしても出ない。その後も何度電話をかけ直しても出てくれない。彼はLINEを送ることにした。
「今家の前に居る。会って話がしたい。」
そうLINEを送った侑也は待ち続けたすでに辺りは夜になっていて、不審者だと思われても困るため侑也は帰ろうとした。すると侑也のスマホが鳴った。
「昌美だ」
そう思った侑也はすぐにLINEを開いた。
「もう信じられない」
そう一言だけLINEには書かれていた。侑也はすぐに昌美に電話をかけるが出てもらえない。
「会って話がしたいんだ。お願いだから外に出てきてよ」
侑也はLINEを送るが一向に返信はない。
ここで彼は初めて気付いた。
赤い糸が切れてしまったことに
彼にとっては「友達にLINEしただけ」のこと。ただそれだけのことだがそんなことは昌美には関係なかった。彼女にとっては侑也だけがすべてだった。
「正直男の人あんま信用できないんだよね。」
侑也は昌美が言った言葉を思い出していた。彼女は前の彼氏に浮気をされて傷ついていた。それでも侑也のことを信じて連絡を取り合い、告白を受け入れてくれた。彼女は侑也のことだけを見ていた。
だが、侑也は自らの手で彼女をさらに深く傷つけた。たとえ自分にとっては大したことでなくてもそれで傷つく相手はいる。取り返しがつかないこともある。
侑也は自分がしたことを心から悔いた。でももう遅かった。悔いなんていうものは何の役にも立たない。それよりも悔いが無いように彼女と接することのほうがよっぽど大切だということが身に染みた。
彼は昌美の家からトボトボと帰る。これまでの思い出がよみがえり、彼はそっと涙を流した。冬の冷たい風がいつも以上に体を冷やした。夢のような時間はとても脆く、儚く終わった。
次の日から侑也はあらゆることに対してヤル気を失っていた。学校やバイト先でも終始空元気を見せるが、彼の心はもうすべてのことがどうでもよくなっていた。
そして、3年生の卒業式の日。この日も侑也は空元気を見せながらマサシと話をしていた。
「ちょっとトイレ行ってくるわ」
そう言い、侑也はトイレへ向かう。すると、3年生がぞろぞろと卒業式が行われる体育館へと向かっていた。
「!?」
何かに気付いた侑也は3年生のほうを見る。そこには普段と何も変わらない昌美の姿があった。彼女は友達と楽しそうに話をしながら体育館へ向かっていた。そんな彼女が侑也の目の前を通り過ぎる。まるで侑也が見えないかのように。
彼女の目に侑也はもう映らなかった。
侑也は通り過ぎた昌美の背中を見つめたまま立ち尽くしている。
彼は昌美の目に自分が映らないことに耐えられなかった。卒業式が終わると1人ですぐに下駄箱へと向かい学校をあとにする。帰り道には綺麗な桜が咲いていた。ただ、その桜の美しさは侑也にとってはなぜか辛かった。
それは卒業式とともに春の訪れを告げていた。
侑也は少し疑問に感じ、「何かあった?」とLINEを送った。その後も返信が無いまま時間は過ぎ、すでに放課後になっていた。侑也はバイトまでの道のりを歩きながら少しイライラしていた。
「何でなんにも返してくれないんだよ!」
そんなことを考えながら歩いていると後ろからマサシが声をかけてきた。
「オイ!侑也!」
侑也が振り返るとマサシは走ってきたのか息を切らしている。
「どうしたんだよ。」
侑也はマサシのほう少し冷たく見ながら言う。
「いや、最近ダブルデートもすること無くなったし、お前ら順調なのかなと思って」
そう言うマサシに侑也は少し笑みを浮かべて
「順調だよ」
そう言った。ただ、まさに今順調ではない状況を感じていた侑也はマサシから避けるように「俺バイトあるから急ぐわ!」とだけ言ってその場を足早に去った。マサシはそんな侑也に少し違和感を感じたものの声を掛けられないでいた。
その夜、バイトが終わった侑也はスマホを開いてすぐにLINEを確認する。
「まだ返事が無い・・・」
徐々に彼の不安は大きくなっていた。
「もしかして・・・」
そう思った侑也は昨日美奈子だと思って間違って昌美に送ったLINEを見た。
「もしかして・・・コレ?」
すぐに侑也は昌美にLINEを送った。そのLINEには「間違えてLINEを送った相手はオンラインゲームで知り合った女性」であること、「ただの友だち」であること、「会ったことが無い」ということ、「浮気ではない」ということなど、とにかく正直に謝った。
「怒ってるよな」
そう思い侑也は自分がしたことを悔いた。ただ、彼の中にはどこかで「たかがLINEを送る先を間違えただけ」、「言えばわかってもらえる」といった思いがあった。だが、それでも昌美からの返信は無い。
「会いに行って話を聞いてもらうか」
そう考えるも怒っている時に無理に「話を聞いてくれ」というのはどこか気が引けた。自分がバカなことをして怒らせたのだ。とりあえず彼は昌美からの反応を待つことにした。
ただ、次の日になっても、またその次の日になってもLINEは来ない。侑也はついに昌美の家まで足を運んだ。まだ、「話し合えばわかる」と希望を持って。
昌美の家の前に着いた侑也は昌美の自転車があることを確認して電話を掛けた。いくら鳴らしても出ない。その後も何度電話をかけ直しても出てくれない。彼はLINEを送ることにした。
「今家の前に居る。会って話がしたい。」
そうLINEを送った侑也は待ち続けたすでに辺りは夜になっていて、不審者だと思われても困るため侑也は帰ろうとした。すると侑也のスマホが鳴った。
「昌美だ」
そう思った侑也はすぐにLINEを開いた。
「もう信じられない」
そう一言だけLINEには書かれていた。侑也はすぐに昌美に電話をかけるが出てもらえない。
「会って話がしたいんだ。お願いだから外に出てきてよ」
侑也はLINEを送るが一向に返信はない。
ここで彼は初めて気付いた。
赤い糸が切れてしまったことに
彼にとっては「友達にLINEしただけ」のこと。ただそれだけのことだがそんなことは昌美には関係なかった。彼女にとっては侑也だけがすべてだった。
「正直男の人あんま信用できないんだよね。」
侑也は昌美が言った言葉を思い出していた。彼女は前の彼氏に浮気をされて傷ついていた。それでも侑也のことを信じて連絡を取り合い、告白を受け入れてくれた。彼女は侑也のことだけを見ていた。
だが、侑也は自らの手で彼女をさらに深く傷つけた。たとえ自分にとっては大したことでなくてもそれで傷つく相手はいる。取り返しがつかないこともある。
侑也は自分がしたことを心から悔いた。でももう遅かった。悔いなんていうものは何の役にも立たない。それよりも悔いが無いように彼女と接することのほうがよっぽど大切だということが身に染みた。
彼は昌美の家からトボトボと帰る。これまでの思い出がよみがえり、彼はそっと涙を流した。冬の冷たい風がいつも以上に体を冷やした。夢のような時間はとても脆く、儚く終わった。
次の日から侑也はあらゆることに対してヤル気を失っていた。学校やバイト先でも終始空元気を見せるが、彼の心はもうすべてのことがどうでもよくなっていた。
そして、3年生の卒業式の日。この日も侑也は空元気を見せながらマサシと話をしていた。
「ちょっとトイレ行ってくるわ」
そう言い、侑也はトイレへ向かう。すると、3年生がぞろぞろと卒業式が行われる体育館へと向かっていた。
「!?」
何かに気付いた侑也は3年生のほうを見る。そこには普段と何も変わらない昌美の姿があった。彼女は友達と楽しそうに話をしながら体育館へ向かっていた。そんな彼女が侑也の目の前を通り過ぎる。まるで侑也が見えないかのように。
彼女の目に侑也はもう映らなかった。
侑也は通り過ぎた昌美の背中を見つめたまま立ち尽くしている。
彼は昌美の目に自分が映らないことに耐えられなかった。卒業式が終わると1人ですぐに下駄箱へと向かい学校をあとにする。帰り道には綺麗な桜が咲いていた。ただ、その桜の美しさは侑也にとってはなぜか辛かった。
それは卒業式とともに春の訪れを告げていた。