こいつ、俺の嫁。ーAnother my wife storyー
素直に言いたくなくて嘘をついたらその後は一瞬だった。
気付けば手首を掴まれて、建物の間の路地裏に連れていかれた。
壁と背中が密着して奴の顔が吐息が感じられるほど近くにあった。
「…何してるの。どいて」
「本当のこと言うまでどかない」
肩を押そうとした手はアッサリと奴の手に絡みとられた。
両手を塞がれて私のできることは奴を睨んで抵抗することしかなかった。
周りの人にはよく思っていること全然表情に出ないよねって言われるのに。
どうして数えるほどしか会ったことのない奴にバレてしまうんだろう。
どうしてこの状況に心臓がバクバクしているんだろう。
「…この状況でも言わねぇならその口、言いやすくなるように塞いでほぐしてやろうか?」
「…っ」
指で唇をなぞられる。
触れられたところから熱くなって、妖艶にそして鋭く射貫く瞳に痺れたように体が動かなくなる。