こいつ、俺の嫁。ーAnother my wife storyー
ガミガミ言っている澪をよそに頬杖をついて窓の外を眺める。
"……私は思っていたことを言っただけ"
あの時がきっと私にとってのチャンスだった。
でも私はそのチャンスの神様の前髪を掴まずに終わってしまった。
あの後奴の腕に一瞬力が入ったけど、すぐに私から体を離した。
「…そうだよな。ありがとな」
あの時の奴の寂しそうな笑みが忘れられない。
きっとあの言葉がほしかったんじゃないと思う。
でもあの時の私はあの言葉しか言えなくて。
あの二文字を言えたなら何か変わっていたのだろうか。
彼はあんな悲しく笑わなかったのだろうか。
こんなに何回もため息をつかずに済んだのだろうか。
そんなこと今考えても言えないことに変わりはないのに、ずっとそのことばかり考えてしまう。