365日ずっと君を。
私の名前は夏目里穂(ナツメリホ)。
普通の高校一年生です。
何もない日常の中で唯一、私にとって新しくなったのが中学から高校に進学したことだけ。
それまで恋も勉強もそこそここなしてきた方だけれど日常は“つまらない”の一言だった。
勉強はクラス順位で言うと真ん中くらいで恋愛の方はいつも好きな人ではなく気になる人止まり。
本気で人を好きになった事なんて初恋くらいだ。
友達付き合いはとゆうと一定の距離を保ちつつ上手くやっていた方だと思う。
だからこの高校生活もそんな日々を送って行くに違いないと思っていた。
あの日が来るまでは__。
「えぇ、我が校は挨拶はきちんとし礼儀正しく……」
──キーンコーンカーンコーン
「はぁ……校長先生、話し長すぎ。入学式はこれだから嫌なんだよなぁ」
「そうだね〜」
机にうなだれながら校長先生に文句を言っているこの子は中学からの友達、浅野美紀(アサノミキ)。
美紀は運動神経抜群で頭も良く成績優秀な生徒。
中学の試験ではいつも上位にいたくらいだ。
高校も美紀はもっと上を目指せたはずなのに私に合わせて着いてきてくれた。
そんな美紀が私は大好きだ。
中学の時も美紀が居てくれたからまだ楽しかった。
だけど私の日常が“つまらない”から変わることはなかった。
元々、そう感じやすい性格なのかもしれないけれど。
「ねぇねぇ里穂!今日ドーナツ屋さん行かない?」
ガバッと勢いよく体をあげて目を光らせながらそう言ってきた美紀。
「いいね!!あ、ごめん……今日は用事があるからまた明日でもいい?」
「用事なら仕方ないよ、明日は絶対に行こうね」
美紀は嘘が下手くそだ。
分かりやすく落ち込んでるな。
明らかに先程の笑顔はなく肩を落としていた。
よし!明日、ドーナツ奢ってあげよう。
「明日は絶対に行こうね!!お詫びにドーナツ奢ってあげちゃう!」
「本当に?やったー!!いっぱい食べよーと!」
またもや分かりやすくはしゃぎ始めた美紀。
うん、単純すぎるよ。
美紀はドーナツの名前を言いながらヨダレを垂らしていた。
今日は入学式で終わりだから帰りのHRが終わった後、美紀は元気に「バイバイ」と言いながら教室から出ていった。
まだ私、バイバイって言ってないんですけど。
美紀は運動部の見学に行くと凄く張り切っていた。
私とのドーナツ屋さんはどこいった。
まぁ、私の用事のせいで明日に変更になったから良いんだけど。
さてと私も家に帰って用事を済ませるとするか。
今日はお母さんもお父さんも家に居ないから光輝(弟)の晩御飯は私が作らないといけないのだ。
そのためにスーパー寄って晩御飯の材料を買って色々とすることあるなぁ。
それに光輝はサッカー部でいっぱい食べるからちゃんと栄養のあるものを作らないといけないんだけど何にしようかな、ん〜迷う。
カレーライスでも良いけど食べ盛りだからやっぱりお肉とかの方が良いのかな?
もうテキトーでいっか。
──次の日。
結局、昨日の晩御飯はカレーライスにした。
光輝も喜んで食べてくれたから結果オーライなんだけどね。
「里穂おはよう!」
後ろから優しくトンっと背中を叩きながら挨拶をしてきた美紀。
「おはよう美紀!」
そして美紀は自分の席につくなり爆睡し始めた。
あれは昨日、夜遅くまで運動してたなぁ。
本当に美紀は無理するんだから。
今日、ドーナツ屋さん行くこと覚えてるのかな?
チャイムと共に先生が教室に入ってきて皆んな一斉に席に着き始めた。
もちろん美紀もゆっくりではあるがちゃんと体を起こしていた。
そして朝のHRの始まりだ。
とは言ってもいつも伝達事項だけ言って直ぐに終わっちゃうんだけどね。
「起立、礼」
この学校は礼儀を大切にしているから皆んな綺麗なお辞儀をしながら声を合わせて挨拶をした。
そして先生の「終わります」とゆう合図と共にワイワイと騒ぎ始めたクラスメイトたち。
オンとオフの差が激しいな。
思った通りHRは直ぐに終わった。と思ったが……
「お!夏目、これを資料室まで運んでくれないか?」
運が悪いのか先生と目が合ってしまい仕事を頼まれしまった。
断ることも出来ず私は「はい」とだけ言って資料を両手に持った。
以外にこれ重いかも。
美紀はと言うと机に突っ伏して爆睡中。
ちょっとはこっちを見なさいよ!
確か資料室ってひとつ上の階だよね?
寝てる美紀を起こすのも悪いし一人で頑張るしかないか、一人で持てないわけじゃないし。
資料室は人気もないし利用者は本当たまーに先生が使うだけ。
そんな事を考えていたらあっとゆう間に資料室の前に着いた。
案外、距離近かったかも。
だけどどうやってドアを開けよう。
両手もふさがってるし誰かに頼もうとしても人気がないため頼めない。
お行儀、悪いけど足で開けるしかないよね。
私は足のつま先を上手に使いながらゆっくりとドアを開けていった。
下手したらこれ吊るよ?吊っちゃうよ?
そしてやっとの思いで資料室を開け中に入り指定の位置に資料を置いた。
「ふぅ、両手が自由ってやっぱり良いな」
「何に浸ってるかしんないけど俺の寝てる邪魔すんなよブス」
「な!!ブスって……」
私はとっさに声のした方を振り向いた。
なんなのよ、この人。
てかどこで寝てんのよ!
明らかにそっちが悪いんじゃん!?
とっさのことで思った事を口に出せなかった私は凄く惨めな奴だ。
だけどそれだけじゃない。
その人は吸い込まれそうな瞳に美しい顔で、女の私でも羨ましいくらいに整っていた顔があまりにも迫力があって声を出すことすら忘れていた。
そして気崩されたら制服に男らしい低い声。
一瞬で皆んなを虜にしてしまいそうな、そう、まさに真のイケメンだった。
正直、私はその姿と顔に見とれていたのかもしれない。
だって言葉が出ないし喋ろうとしても声が出ない。
まるでこの人に全てを奪われたかのような気がした。
それは直ぐに解けることはなく時間が経つばかり。
「何ずっとこっち見てんの?キモいんだけど」
ううん、さっきのは前言撤回。
こんな奴に見とれるわけがない。
だって初対面に対して失礼にも程がある。
「キモくないし見てもない、勘違いは程々に!」
その人は私の言葉が意外だったのか目を見開いてビックリしている様子だった。
でも今の私はそんなのお構い無しにそれだけを言って教室に戻った。
この日から私の“つまらない”日常が変化していったのかもしれない。
さすがに言いすぎたかな、ううん!絶対に向こうの方が言いすぎだし失礼だった!!
私はそんな考えを永遠に繰り返していた。
放課後になり私は美紀の席の方へと向かった。
「美紀〜!ドーナツ屋さん行こ」
「あ!里穂ごめん!昨日、先輩に明日も来てねって言われちゃって断れなかったからドーナツはキャンセルとゆうことで……」
「ふふ、分かった!また今度いこーね」
美紀の顔が本当に申し訳なさそうな顔だったから面白くてつい笑ってしまった。
「ありがとう!」
美紀はそれだけを言い残して走って部活に向かった。
さてと、私はどうするかな。
家に帰っても暇だし学校探検でもするとしますか。
そして私は朝に行った資料室の階を歩いていた。
すると突然、勢いよく腕を引っ張られた。
そして資料室の方へと連れ込まれた。
え!なになに、何が起こったの?!
頭は真っ白だしパニック状態。
腕は掴まれたまま。
私は怖くて下を俯いたままどう切り抜けようかと考えていた。
そしてやっと気持ちを整えた所で私の腕を引っ張った張本人を見る。
「あー!!」
すると今、一番会いたくない奴が目の前にいた。
「うっせーな、耳に響く」
目の前にいる人は両耳を塞ぎながらそんなことを言っていた。
皆んなお分かりだろう、その人は朝私に『ブス』『キモい』と言った人だった。
「あんたね、初対面に何よその言い方は!!そっちが勝手に腕を引っ張ってきたんじゃん!」
朝の怒りがまた込み上げてきてしまった。
そしてその人は私の目を真っ直ぐと見つめてきた。
__ドキッ
「な、なによ。突然、真面目な顔しちゃってさ」
「俺の彼女になってくれませんか?」
唐突の事に頭が上手く回転してくれない。
「え、言ってる意味が分からないんだけど」
「って言っても仮でいいんだけど」
「は?」
仮だと、このヤロウー!!
少しでもドキドキした私がバカだった。
からかいやがって。
プツプツと怒りが込み上げてきたのが分かる。
「まぁ、取り敢えず自己紹介するわな。俺の名前は刈谷大貴(カリヤダイキ)、高一です」
私のことはお構いなしにだらんとした姿勢で自己紹介をし始めた刈谷くん。
これって私も言わないとダメなやつだよね?
「えっと、私は……」
「あー知ってるからいいよ」
「え!なんで知ってんの?怖いんですけど」
「名札にきっちり名前、書いてんじゃん」
あー、名札を見たのね。
私たちの学校は名前を書いて胸元に名札を付けなきゃいけないルールがある。
それなのに刈谷くんは付けていない。
初っ端から問題児じゃん。
「ま、まぁ一応自己紹介するよ。私は高一の夏目里穂です。よろしくお願いします」
って何これ!なんの儀式?
「話戻るけど俺の仮カノになって」
「いや、それは本当にごめんなさい」
私はそれだけを言って資料室から出ようとした。
その瞬間、ガシッと腕を掴まれて……
「待てよ。まず理由を聞け」
「え、なんで命令形?」
まぁ、なんで初対面の私にそんな無理難題を頼んできたのかは気になるけど。
「で、理由は何?」
私は資料室を出ずに理由を聞き出した。
「理由は女避けもそうだけど、お前が俺に興味なさそうだったから頼んだ」
「はい?確かに興味ないけど」
女避けってなに?突然、自慢話ですか??
私は呆れた顔で刈谷くんを見た。
「俺、女って大がつくほど嫌いなんだよ。いちいち可愛こぶって甘ったるい香水の匂いを擦り付けて来たりして本当にウザイ存在でしかない」
刈谷くんは真顔でそう言った。
私も一応、女なんですけど。
そして刈谷くんはまだ話を続けた。
「そんな中お前に会ってあんなに俺に反抗した奴、始めて見たから丁度いいと思ったんだ。“仮カノ”に」
明らかに刈谷くんは“仮カノ”を強調していた。
仮カノ以上になることはないと遠回しに言ってるんだと思う。
純粋な瞳で何かを訴えるような眼差しで私を見てきた刈谷くんに私は心臓をわし掴みされた。
断りたいけどこんな真面目な顔で言ってきたから断ったら可哀想だなとゆう感情がだんだんと芽生えてくる。
「どのくらい仮の彼女を演じればいいの?」
「女が俺に寄ってこなくなるまで」
刈谷くんは表情ひとつ変えずにそう答えた。
はぁ……彼女が居るって分かれば女子たちも刈谷くんに関わらなくなるってわけね。
聞くところによると刈谷くんは凄くモテているらしい、あのクールイケメンが女子の中で好評だとかなんとか。
「分かった、その代わりちゃんと仮は返してもらうからね」
「おう!任せとけ。これからよろしくな里穂」
__ドキッ
甘い笑顔で私の名前を呼んできた刈谷くんは天然タラシなのだろうか。
てゆうかドキッて何よドキッて!
私がこんな奴にドキドキするはずがない。
そうよ!絶対に有り得ない!!
それから数日が経つと刈谷くんに彼女が居るとゆう噂が思いのほか早く出回っていた。
女子の間では刈谷くんの彼女は超人気モデルだの他校の美人さんだのとデタラメばっかり。
皆んなその彼女が私って知ったら絶対に驚くよな。
まぁ、“仮”なんだけどね。
仮の彼女になってから何かが変わる事はなかった。
そっちの方が私も調子狂わずやっていけるから有難いのだけれど。
まぁ、あるとすれば廊下ですれ違う度に笑いかけてくれたり刈谷くんとメアドを交換してそれでお喋りをしているくらいだ。
主に向こうからメールが来ることが多いけど。
私から話しかけたことなんて一度もないと思う。
だって何を話せば良いか分かんないし。
仮の彼女になったあの日、刈谷くんは私のスマホを勝手に取ってメアドを交換をしていた。
私の許可なく勝手にね。
でも今となっては彼からの連絡が楽しみになってきている自分がいる。
だけど昨日から刈谷くんからのメールがない。
毎日、必ず連絡をしてくるのに何かあったのかな?
そして私はまた刈谷くんからの連絡がないかとスマホを確認する。
なによ、自分から来る時は来るのに来ない時は来ないとか自分勝手すぎにも程がある。
私はあんたの暇潰し女じゃないっつーの!!!
そんなことを心の中で叫んでいた。
すると……ピコンッ
メールが来た時の音がなった。
私は即座にスマホを手に取り受信履歴を確認する。
【おはよう】
その一言だけだけれど私にとっては凄く嬉しいものに変わっていた。
最初はこれだけのために連絡してこないでよ!とか思っていたのに。
これは自分でも薄々気付いてはいた。
だけど気付きたくない自分もいた。
もしかしたら刈谷くんと話せなくなっちゃうかもとゆう不安で私はいつも通り彼と接することを決意した。
この想いは心の奥底に閉まっておこう。
誰にも気付かれないように。
いつの間にか私は刈谷くんに恋してたんだなと実感する。
私は刈谷くんにこう返信をした。
【おはよう】
今まで以上に素っ気ない返事ではあるが気付かれないためにはこうするしかなかった。
この時から私の二度目の恋がスタートした。
初恋の時以来、人を本気で好きになれなかった私だけど刈谷くんに出会って人を好きになる気持ちを改めて感じることができた。
初恋の時は私の自信がなくて告白も出来ずじまいだったけど今回もそんな恋をしてしまったみたいだ。
その後、刈谷くんから何件かメールが来たけどあえて返信をしなかった。
じゃないと彼に溺れてしまいそうだったから。
いつかトドメが聞かなくなった時、勢いで想いを伝えてしまいそうだったから。
それほど私は彼に恋をしている。
その日は運良く刈谷くんと廊下ですれ違うこともなくメールの返信をしないまま眠ってしまった。
──次の日。
私はいつものように登校していた。
スマホを開くなりメールの受信履歴には刈谷くんの名前が数件あった。
その内容は……
【今日、資料室で話したいことがある】
【資料室で待ってるから】
【何かあった?】
【大丈夫?】
【また明日、改めて話がしたい】
なぜか私は何か悪いことが起こるんじゃないかと不安に思い返信することができずじまいだった。
下駄箱に着くとあくびをしている生徒や元気にお喋りをしている生徒などたくさんいた。
分かるよ、朝は眠いよね。
そんなことを考えながら私は教室に向かった。
外を眺めながら歩いていると……
「里穂」
腕を掴まれたと同時に私の大好きな人の声だと直ぐに気付いた。
私は後ろを振り向き彼の顔を見る。
相変わらず綺麗な顔立ちに純粋な瞳で私を見つめる彼の姿にまた胸が苦しくなった。
ごめんね、刈谷くん。
刈谷くんは私が刈谷くんに興味がないと言った。
私もそう思っていたけど私、刈谷くんに恋しちゃったんだ。
私は涙が出てきてしまいそうなのを必死で堪えた。
ほらね、刈谷くんを見ただけで涙が出てきそうになるなんて本当に重症すぎるよね。
自分でもバカみたいだなって思う。
私は下に俯き涙を堪えるので精一杯だった。
そんな私に気付いたのか刈谷くんは人気の少ない所へと私を連れて行ってくれた。
前を向かなくても分かる、ここは資料室だ。
私と刈谷くんが初めて出会った場所。
こんな所に来たらよけいに涙が抑えられなくなるよ。
「どうして昨日、返信してくれなかったの?」
予想外の言葉に私は驚きが隠せなかった。
「刈谷くんってそんなこと気にする人だったんだね」
私はバカにするように笑った。
だけど刈谷くんは一瞬たりとも動じなかった。
「なんで俺と目合わせようとしないの?」
さらに話を続ける刈谷くんに私はどうすることも出来なかった。
そして数分の沈黙が流れた。
その沈黙を破ったのはもちろん刈谷くんで。
「どっちでもいいからどっちかの質問に答えて」
私は涙が引っ込んだのをサインに刈谷くんの方を見た。
そして私は思わぬ光景に目を見開いてしまった。
「刈谷、くん……」
刈谷くんは今まで見たことないくらいに余裕がない表情をしていた。
「仮カノ嫌になっちゃった?」
「そんなわけない」
私は直ぐに自分の口を塞いだ。
ヤバい、食い気味にいきすぎたかも。
「じゃあなんで?」
私はなんて答えようか必死に考えた。
「それは……」
「好きな奴でもできたの?」
__ドクンッ
それは明らかに今までのドキドキとは違っていた。
自分の気持ちがバレそうで怖かった。
刈谷くんの瞳は今までにないくらい悲しそうだった。
もう、これは嘘つけないよ。
ちゃんと正直になろう。
刈谷くんと話せなくなっても自分の気持ちを隠して苦しむよりは100倍マシだ。
この関係に区切りをつけよう。
振られたら刈谷くんの連絡先も全て消そう。
そんなことを考えて私は口を開いた。
「好き」
「え」
刈谷くんは目を見開いていた。
だけど一度、言った言葉は撤回できない。
そして私自身もトドメがきかないと思った。
「好きなの刈谷くんの事が、大好きなの」
私は我慢していた涙をいっぱい流した。
今までずっと隠してきたこの想いも全部涙によって流れていくようだった。
私の口は止まることを知らなかった。
「好きになってごめんなさい、ごめんなさい……」
一生懸命、涙を拭いながら震える声を振り絞った。
「ヒック……ヒック……」
どうする事もできない。
好きになったら止められない。
するとフワンッと甘い匂いによって包まれた。
ビックリして私の涙はそれによって止まった。
これが誰なのかなんて直ぐに分かる。
あぁ、この感じ落ち着くなぁ。
優しく私の頭を撫でながら抱きしめてくれた刈谷くん。
それに答えるように私も腕を回そうとしたその時。
「ごめん」
そして私の腕は元の位置に戻った。
『ごめん』そう言った彼の声は凄く掠れていた。
それに私は胸がチクッとした。
やっぱりそうだよね、ハナから期待なんかしてなかったよ。
「大丈夫だよ、刈谷くんは悪くない。私の方こそ好きになってごめんね……」
私はまた涙が出てきそうになった。
震える声を必死に振り絞って大丈夫なフリをした。
「俺こんなに大事にしたいと思った人、初めてだったからこれが里穂と同じ好きなのか分からなくてどこかで余裕を感じてた、でもカッコ悪ぃよな。女から言わせるなんて」
思いもよらない言葉に私は頭が回らなかった。
「それって……」
私が言葉を言おうとした瞬間、刈谷くんはガバッと私から離れて笑顔でこう言った。
「俺の本物の彼女になってください」
手を差し伸べながらそう言った彼の姿に私はまた涙が止まらなかった。
夢じゃないよね?本物だよね?
私は彼の手を取りまた二人で抱きしめあった。
力強く、もう離れないでと言うように。
そして思い出の資料室で私たちはそっとキスを交わした。
ねぇ、刈谷くん。私ね、刈谷くんのおかげで“つまらない”日常が“楽しい”に変わったんだよ。
刈谷くんはそんなこと知らないだろうけど。
「私、刈谷くんのこと365日ずっと想い続けるよ」
「365日だけじゃない、その先もずっとな?あ、あと刈谷くんじゃなくてこれからは大貴って呼んで」
「……大貴」
少し照れくささはあるけど私は頬を赤らめながらそう言った。
それに対して大貴は返事をするようにまた強く抱きしめてくれた。
大好きです、これから先もずっと君を。
 
        【END】
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