君といた夏を忘れない〜冷徹専務の溺愛〜
1 プロローグ
蝉の声で耳が麻痺しそうだ。
眩しすぎる太陽の中を、必死に駆けている。ジリジリと肌が焼けていく感覚にも構っている暇はない。
──間に合わないかも!
既に汗だくで、お気に入りのワンピースが身体に張り付いてしまっている。
必要最低限しか入れていない小さなショルダーバッグだが、今は足を踏み出す度に体にぶつかって邪魔だ。
彼が好きだと言った、この長い髪も。
だけど必死に走るしかない。間に合わなければ。走って走って。
やっと路地から大きな通りに出た。あの歩道橋を渡って、そこからタクシーに乗ろう。きっと間に合う。そう思って歩道橋の階段を駆け登る。
1秒でも早く彼の元へ向かわなくちゃ。きっと私を待っている。彼に会って言わなくちゃ。
彼はきっと驚くだろう。怒るかもしれない。
だけど、どうしても、どうしても今、彼に会って伝えなくちゃいけない。愛おしい、優しい瞳しか思い出せないけれど。会わなくちゃ。
でも……
──彼って……だれ?
私は足を踏み外し、世界は反転した──
眩しすぎる太陽の中を、必死に駆けている。ジリジリと肌が焼けていく感覚にも構っている暇はない。
──間に合わないかも!
既に汗だくで、お気に入りのワンピースが身体に張り付いてしまっている。
必要最低限しか入れていない小さなショルダーバッグだが、今は足を踏み出す度に体にぶつかって邪魔だ。
彼が好きだと言った、この長い髪も。
だけど必死に走るしかない。間に合わなければ。走って走って。
やっと路地から大きな通りに出た。あの歩道橋を渡って、そこからタクシーに乗ろう。きっと間に合う。そう思って歩道橋の階段を駆け登る。
1秒でも早く彼の元へ向かわなくちゃ。きっと私を待っている。彼に会って言わなくちゃ。
彼はきっと驚くだろう。怒るかもしれない。
だけど、どうしても、どうしても今、彼に会って伝えなくちゃいけない。愛おしい、優しい瞳しか思い出せないけれど。会わなくちゃ。
でも……
──彼って……だれ?
私は足を踏み外し、世界は反転した──
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