君といた夏を忘れない〜冷徹専務の溺愛〜
6 たからもの side遼一
一体どれ程時間が過ぎたのか。呆然と椅子に座っていた。
突然、楓が会社を辞めると言い出した。退職届を握りしめ、今にも泣きそうな顔をしながら、「あなたの側から離れたい」と言ったのだ。
思い出したと言っていた。記憶を取り戻した途端、俺の元から去ると言う。何故だ。
パーティーでは、着飾った楓はとても美しかった。褒めれば照れて、好意を滲み出すと顔を真っ赤に染めた。可愛らしいその反応からは、決して嫌悪は感じられなかった。
2年前も、今も、何が原因なのか全く検討もつかなかった。
執務室で項垂れていると、高林が入室してきた。中川も一緒だ。
「専務、相沢さんから辞めるって連絡が来たんだけど」
つかつかと入ってきた高林が、執務机の上に置いてある退職届を目にした。そして勢いよく怒り始める。
「相沢さんの負担になるようなことをしたの?! あの子が辞めると言い出すなんて!」
「……分からない」
「分からないってどういうことよ!」
「俺だって何故か聞きたい!」
高林と俺が言い合う中、じっと考え込んでいた中川がぽつりと呟いた。
「急に退職を決意するというのは、彼女らしくありませんね。……彼女に何かを吹き込んだ方がいる、とか?」
「!?」
「まさか」
「パーティーに来ていた関係者で、相沢さんが過去専務と付き合っていたことを知る人物、または専務に特別な感情を抱いている女性といえば……」
「……まさか」
「あの方なら、ありえるかと」
思いついたその人物を訪ねることにした。
突然、楓が会社を辞めると言い出した。退職届を握りしめ、今にも泣きそうな顔をしながら、「あなたの側から離れたい」と言ったのだ。
思い出したと言っていた。記憶を取り戻した途端、俺の元から去ると言う。何故だ。
パーティーでは、着飾った楓はとても美しかった。褒めれば照れて、好意を滲み出すと顔を真っ赤に染めた。可愛らしいその反応からは、決して嫌悪は感じられなかった。
2年前も、今も、何が原因なのか全く検討もつかなかった。
執務室で項垂れていると、高林が入室してきた。中川も一緒だ。
「専務、相沢さんから辞めるって連絡が来たんだけど」
つかつかと入ってきた高林が、執務机の上に置いてある退職届を目にした。そして勢いよく怒り始める。
「相沢さんの負担になるようなことをしたの?! あの子が辞めると言い出すなんて!」
「……分からない」
「分からないってどういうことよ!」
「俺だって何故か聞きたい!」
高林と俺が言い合う中、じっと考え込んでいた中川がぽつりと呟いた。
「急に退職を決意するというのは、彼女らしくありませんね。……彼女に何かを吹き込んだ方がいる、とか?」
「!?」
「まさか」
「パーティーに来ていた関係者で、相沢さんが過去専務と付き合っていたことを知る人物、または専務に特別な感情を抱いている女性といえば……」
「……まさか」
「あの方なら、ありえるかと」
思いついたその人物を訪ねることにした。