君といた夏を忘れない〜冷徹専務の溺愛〜
***
早朝のオフィスは寒い。まだ他の社員は来ておらず、なんとなく自分だけの為に暖房を入れるのは気が引けて、凍えながら仕事をする。
マフラーはしたまま、膝掛けに足用カイロも装着しているが、2月の寒さには負ける。
(もう少ししたら、暖房を入れよう)
そう決意したところに、同期の華園麻紀が飛び込んで来た。
「楓!おはよう! ねぇ、見た?専務が帰国早々出社されてたわよ! ……ってかこの部屋すっごい寒いじゃない! 暖房つけなさいよね!」
クリクリした大きな目を、これでもかと見開いている。目まぐるしく話題を変える彼女はとても華やかで美しい。
「おはよう、麻紀。……専務がもう出勤されてるの?随分早いのね」
今日は、城ヶ崎遼一専務が帰国する日だ。
2年前から海外支社に拠点を置いていたが、今日から本社付けとなるのだ。
帰国日が直前まではっきりとしなかったが、今日だと判明してから、女子社員を中心に社内が色めき立っている。
城ヶ崎専務は、社長の一人息子で37歳独身。高身長で切れ長の瞳が印象的なイケメンである。経済誌や、時にはファッション誌からも取材要求があるくらいの整い具合で、その容姿は誰もを魅了する、らしい。
一方で、事業に手は抜かず、厳しい一面もあり、『氷の御曹司』と影で呼ばれているとか。
「今朝早くの便で帰国したみたい! まさか帰国早々出社されるなんて! びっくりしたわよ」
暖房のスイッチを入れた後、自席に着きながら、麻紀は鏡でメイクをチェックしている。ロングの髪は後ろでまとめられ、大きな目を生かした華やかなメイク。それでいて、今日は女子アナのような清楚な服装で、私からみても完璧だ。
一方、私は童顔で、身長はそれほど高くなく、27歳になった今も年齢通りに見られたことがない。秘書という職業柄、清潔感のある社会人として恥ずかしくない格好をしているが、麻紀のような華やかさは無い。
少しでも大人っぽく見られたくて、髪型はロングヘアにしてみたり、大人しい色使いの服を選んで背伸びしてみてはいるが、やはり麻紀のようにはいかないのだ。
早朝のオフィスは寒い。まだ他の社員は来ておらず、なんとなく自分だけの為に暖房を入れるのは気が引けて、凍えながら仕事をする。
マフラーはしたまま、膝掛けに足用カイロも装着しているが、2月の寒さには負ける。
(もう少ししたら、暖房を入れよう)
そう決意したところに、同期の華園麻紀が飛び込んで来た。
「楓!おはよう! ねぇ、見た?専務が帰国早々出社されてたわよ! ……ってかこの部屋すっごい寒いじゃない! 暖房つけなさいよね!」
クリクリした大きな目を、これでもかと見開いている。目まぐるしく話題を変える彼女はとても華やかで美しい。
「おはよう、麻紀。……専務がもう出勤されてるの?随分早いのね」
今日は、城ヶ崎遼一専務が帰国する日だ。
2年前から海外支社に拠点を置いていたが、今日から本社付けとなるのだ。
帰国日が直前まではっきりとしなかったが、今日だと判明してから、女子社員を中心に社内が色めき立っている。
城ヶ崎専務は、社長の一人息子で37歳独身。高身長で切れ長の瞳が印象的なイケメンである。経済誌や、時にはファッション誌からも取材要求があるくらいの整い具合で、その容姿は誰もを魅了する、らしい。
一方で、事業に手は抜かず、厳しい一面もあり、『氷の御曹司』と影で呼ばれているとか。
「今朝早くの便で帰国したみたい! まさか帰国早々出社されるなんて! びっくりしたわよ」
暖房のスイッチを入れた後、自席に着きながら、麻紀は鏡でメイクをチェックしている。ロングの髪は後ろでまとめられ、大きな目を生かした華やかなメイク。それでいて、今日は女子アナのような清楚な服装で、私からみても完璧だ。
一方、私は童顔で、身長はそれほど高くなく、27歳になった今も年齢通りに見られたことがない。秘書という職業柄、清潔感のある社会人として恥ずかしくない格好をしているが、麻紀のような華やかさは無い。
少しでも大人っぽく見られたくて、髪型はロングヘアにしてみたり、大人しい色使いの服を選んで背伸びしてみてはいるが、やはり麻紀のようにはいかないのだ。