もう離さないでね
ドアを開けると、誰かとぶつかりそうになった。

「あ、ごめん…って結愛か。ついさっき放送で頭髪検査やるって名前呼ばれてたよ」

あ、そうなの?

目を合わせることなく淡々と告げる聖那。

…その瞳にはもうあたしは映ってない。

『そうなんだ。聖那も?』

「そ、俺も呼ばれちゃった。サボろうか迷ったけどさすがに行かないとまずいかなって」

一緒にいく?と言われたけど、あたしは首を振った。

『ううん。あたしは行かない』

「そっか…。わかった」
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