へたれアイドル王子 卒業します アミュ恋 4曲目
「やっぱり、マトイ君だ」
へ?
「このドア、すりガラスだから。
誰か立っているなって思っていたんだけど。
なかなか入ってこないから」
穏やかなに目じりを下げ、
俺に微笑む、30歳くらいのイケメン。
俺がずっとドアの前に立っていたって、
バレてたのかよ。
マジで、恥ずかしすぎ。
「看板もインターフォンもないし。
ここでいいのか、心配にさせちゃったかな?」
「いえ……」
語尾が消えかけた俺の返事を聞いて、
更に微笑みを追加し。
「寒かったでしょ?中にどうぞ」と勧めてくれた。
足を踏み入れた先には、
机が並ぶ事務所のような場所。
ここに、俺たち以外の人の気配はない。
仕事ではないとはいえ、
きちんと挨拶をしないとな。
小5から、蓮見に叩き込まれたことを実践する。