へたれアイドル王子 卒業します アミュ恋 4曲目
「ご挨拶が遅れて申し訳ありません。
アミュレットの高梨マトイです。
よろしくお願いします」
「そんな硬くならないで。
俺はこの劇団の代表、染谷(そめや)です。
こちらこそ、よろしくね」
人生で怒鳴ったことありますか?
そう聞きたくなるほど、終始笑顔のこの人が、
蓮見がいる劇団の代表なわけか。
「それにしても、驚いたよ。
春輝くんから、いきなり稽古場に
電話が来たときは」
は?
「マトイ君が、俺たちの舞台に出たがっているって
言われて。
詐欺の電話かと思って、すごく警戒しちゃったんだよ」
アハハと爽快な笑い声に包まれ、
俺も作り笑顔を、顔に貼り付けているけれど。
心の中は、春へ向けた怒りの念がもくもく湧いている。
俺、蓮見がいる劇団の舞台に出たいなんて、
口にしたことないよな?
全部、春に仕組まれていたのかよ。
春は、子供の時からそういう奴だったなと、
怒りが諦めに変わる。