へたれアイドル王子 卒業します アミュ恋 4曲目
『泣いちゃダメ! 泣いちゃダメ!』
必死に脳に懇願。
唯一、冷静であろうマトイと目が合い
私の心が、グワンとうずいた。
なに、この
マトイの穏やかな微笑みは?
本当に、私に向けたもの?
信じられない光景に
つい固まってしまった私。
その時、優しさしか感じないマトイの声が
私の耳に届いた。
「俺が、叶えてやるからな」
「え?」
「超満員の全国ツアー、
俺が連れてってやるからな」
う……
だから、ヤバいんだって。
いつも攻撃てきなマトイに
そんな優しい言葉をかけられたら。
涙……
止まんなくなっちゃうんだって!!
瞳に溜まっていく大粒の涙。
誰にもバレないように、うつむいた時。
「璃湖ちゃん、事務所行こう。
アミュレットのこれからについて、話したいし」
副社長が、私をこの場から逃がしてくれた。
「あんたたち。次回までにダンスステップ
マスターしてくるのよ!」
私はなんとか鬼声を吐き捨てると
顔が見られないように、出口まで走って行った。