へたれアイドル王子 卒業します アミュ恋 4曲目

 絶対に手に入らない、大好きな女。



 その現実に、心が真っ暗闇に支配されかけた時、


「できたよ」


 蓮見の弾んだ声が聞こえてきた。




「マトイ君、鏡の前に立ってみて」



「は?」



「いいから」



 ウフフと嬉しそうな声に、
 転覆しかけた俺の心も、海面に浮きあがる。


 俺は素直に、鏡の前に立った。



「ほらね。 やっぱりマトイ君は、
 この髪型のほうが似合う」



 鏡越し。
 俺の後ろに立つ、満面の笑みの蓮見と目が合い。


 ドキリ。


 俺の心が、一瞬で蓮見に持って行かれた。




 その大人っぽい笑顔、反則だろ?



 前髪と左横の髪をクルクルとピンでとめた俺を見て、
 優しくニコって。



 蓮見さ、俺に好きになって欲しいわけ?

 それとも、俺以外の奴にも同じことをするわけ?



 嬉しいけど。
 ドキドキしすぎて、胸が焼け焦げそうだけど。


 なんか、複雑。
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