へたれアイドル王子 卒業します アミュ恋 4曲目
「蓮見さ」
「ん?」
一応、返事はしてくれたけれど。
俺を見ることなく、作業を続けている。
「なんで舞台のセリフが、一言だけなんだよ?」
わかりやすく固まった蓮見。
手が止まって。
俺の衣装をじっと見つめだした。
「まだこの劇団に入って……1年だし……」
それが、本当の理由じゃねぇよな?
この劇団の奴ら。みんな良い奴で。
蓮見だけ、いてもいなくてもいいような役を
与えるる奴なんて、いないよな?
代表の染谷さんが、
イジメみたいなことをするとは、思えねぇし。
「もったいねぇな。
俺が座長なら、蓮見を主役にするのに」
これでもかというほど、目を見開いた蓮見。
一瞬、俺と視線が絡んだけれど。
悲し気に光った瞳は、また俺の衣装を見つめだした。
俺には言いたくないわけ?
なんで悲しそうな顔をしているのか、
教えてくれないわけ?