へたれアイドル王子 卒業します アミュ恋 4曲目
正直、後悔している。
1年前、蓮見の記憶から俺たちを消したこと。
蓮見が幸せになってくれると思ったのに。
俺のことなんか忘れて、
笑って生きてくれるかと思ったのに。
まさか……
これ以上、記憶が消えるかもしれない恐怖から、
恋も、芝居も、諦めているなんて。
「マー君、いいでしょ?」
春輝の猫なで声が耳に届き。
異世界に飛んでいた俺の脳が、フッと体の中に戻ってきた。
「は?」
「僕たちのお部屋。はすみんに見せても」
「俺の部屋以外ならな」
きつめに言葉をぶつけ、平常心を装ったけれど。
俺の心の中は、バクバク状態。
入んなよ。
蓮見は俺の部屋に、絶対に入んな。
だって。
蓮見が俺の部屋に入った、既成事実の影が、
部屋で一人になった俺に、間違いなく襲ってくる。
そして、会いたくなる。絶対に。
って、俺の返事も聞かず。
蓮見は廊下に連れていかれているし。