へたれアイドル王子 卒業します アミュ恋 4曲目

 俺が蓮見の記憶を消す直前、言ってたよな?


 中学の時に、酷いイジメにあっていたって。

 思い出したくもない、過去だって。



 心の痛みを吐き出したような重いため息が、
 蓮見からこぼれた。

 そして、穏やかな光を瞳に宿した。



「やっぱり私、前髪と左横をアップした
 髪型のほうが好きだな」



 細くて長い蓮見の指が、
 写真の中の俺の額に触れている。



 そんな優しい目で、写真の俺を見つめんなって。



 写真じゃなくて、直接俺に触れて欲しい。

 そんな欲求が膨れ上がって、抑えきれなくなるから。



 俺の部屋に、大好きな女と二人きり。

 心臓が壊れるか不安になるほど、胸が飛び跳ねている。



 平常心を取り戻さなきゃと、
 蓮見から視線を逃がした数秒後。


 予想外の蓮見の言葉が、
 俺の心臓を震え上がらせた。



「好きって……書いてある……」



 って。おい。

 いつの間に、
 そんな物の底なんて見てたんだよ。



 蓮見が手に持っている、それ。

 俺が蓮見にあげて返された、オルゴールじゃねぇか。
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