あの~、恋ってどう始めるんでしたっけ?
「はぁ。『恋の始め方』かぁ。意識してするものじゃないと思うけどね。とりあえず、友達から、始めよ!」

連絡先を交換すると、雅紀は皆のもとに駆け戻って行った。

恋の始め方は女性に聞いた方がいいのかな、なんて思う。雅紀に彼氏いない歴10年、なんてバレたら重いと思われるかな。

そんなことを思いながら、帰宅した。

とりあえず、と。

【今日はありがとうございました。まだ、カラオケ中かな?これからもよろしくお願いします。】

とLINEを送っておいた。

翌日。ランチタイムに昨日の飲み会の話になった。

「実紀、ひたすら食べてたよね(笑)2次会も行かないし、せっかく仲良くなれる機会だったのに。ま、私ら2人も収穫なし、だったんだけどね」

碧が残念そうにつぶやく。

「あのね・・・私、雅紀さんと連絡先交換した」

遠慮がちに私が言うと

「えっ!」

「マジで!」

「やるね、実紀ぃ」

とみんなが盛り上がった。

「それでそれで?」

「お礼のラインを送ったけど、返事がなかった」

「う~ん、昨日、2時まで歌ってたからねぇ」

と律子。

「私が、あんなこと言ったからかな」

「何、何?」

「『恋の始め方教えてくれますか?』って聞いた」

一同、何とも言えない雰囲気になる。

「カンちゃん・・・それって、『私は恋愛初心者です、よろしくご指導願います』って言ったようなもんよ?」

「いきなり、恋愛を意識してます、は重いよ」

「彼は何て?」

「『意識してするものじゃないと思うけどね。とりあえず友達から』って」

ふ~ぅ。みんなの安堵するため息。

「カンちゃん、言っちゃったもんは消せないから、『私も友達から一歩一歩進みたいと思います』かなんか、書いときな」

律子の的確なアドバイスで、私はスマホを取り出した。

「あ、返事来てる『昨日はありがとう。料理をうまそうに食べる姿に見惚れました。しばらく、友達としてつきあって、気が合うようだったら、恋人としてつきあおう。これが、僕流の恋の始め方』だって」

こんな私を見てくれていた人がいたんだ。なんだか感動した。
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