あの~、恋ってどう始めるんでしたっけ?
その週の土曜日。私は、早起きして小さめのお弁当箱にいろいろ作って詰めていた。全て、手作りのもの、と言う気合いの入れよう。

昨晩の雅紀からのラインで、待ち合わせは実紀の最寄り駅、高円寺のロータリー、と言うことになった。もうすぐ、待ち合わせの9時半だ。急がなくちゃ。

「姉ちゃん、やけにワクワクしてない?デート?」

2つ年下の弟の拓実が茶化すように言う、

「ん~、どうかな。行って来ます!」

うまくかわして、高円寺駅へと急ぐ。雅紀の車は、青色の軽だと言う。高円寺駅でくるくる見回していると、青色の車がそばに来た。

「おはよ、実紀ちゃん!」

「あ、おはようございます、雅紀さん」

すると、ふっ、と雅紀が笑って、

「敬語はやめよう。気楽に行こうよ。乗って」

「あ・・・うん」

「この車、見て、どう思った?」

「キレイな色だな~って」

「くすっ。実紀ちゃんらしいや。たいていの女の子はがっかりするんだよね。これ、遠乗り用じゃないから」

「・・・そうなんだ。江ノ島水族館、大丈夫?」

「うん。それくらいの距離なら、下道でいけるから。1号線で行くよ」

「はぁ。詳しくないので、任せます」

雅紀さんは嬉しそうに笑って、

「もしかして、実紀ちゃん、ドライブ初めて?」

「はい・・・男の人の友達って、初めてなの」

「へぇ・・・ウブなんだね。そんなとこが好きだ」

好き・・・そんな言葉も軽く言えちゃう、雅紀さんは、女の子慣れしているんだろうか。私の心を読んだかのように雅紀さんが

「誰にでも好き、とか言ってるわけじゃないから。今のはその・・・本当に好きだな~って思ったから」

雅紀さんが、真っ赤になっていた。私まで、赤くなっちゃうじゃない。

「実紀ちゃんって、彼氏いなかったの?」

車を走らせながら、雅紀さんが問う。

「中学生の時に初彼が出来て・・・15のときにフラれて、それっきり、縁がなかった、って言うか」

「中学生じゃ、免許ないもんなぁ」

「あはは、ですね。雅紀さんは?」

「僕のほうは、それなりに。最後に別れたのは、半年前かな。『あなたの気持ちが分からない』って、毎回別れ際に言われんだよな。僕、あんまり、『好き』とか『愛してる』とか言わなかったからかな。だから、さっき、好きだ、って思ったことを言った」

「嬉しかったです、私」

雅紀は、それなりに恋愛経験を積んでいるんだな。ま、25歳(このとし)なら、当然かぁ。
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