【完】囚われた水槽館~三人の御曹司からの甘美な誘愛~
ぱちりと目を開けると、室外機の静かな機械音と人の温もり匂い、そして安らかな吐息が耳を擽る。
小さなシングルベッドは二人で寝るには窮屈だ。 段々と暗闇に目が慣れていった視線の先には、私の体を包み込むように抱きしめる朔夜さんの繊細な顔。
目を瞑ったまま、彼が小さく言う。
「うなされてたぞ、お前」
「へ?」
「起きてるのかと思ったら、寝てるみたいだし、うなされていた。」
「これってどういう状況」
やっぱり鼻を掠めるのはお風呂上がりの匂いに混じった、朔夜さんの匂い。
ゆっくりと瞳を開ければ、大きな瞳の中不思議な色が揺れる。 それはどこか温かい新緑の色に似ている。
「どーゆー状況もこーゆー状況もこのマンションにはベッドが一つしかねぇ。 お前俺を床に寝せる気か?」
「じゃあ、私が床で寝る。…全然ソファーでもいいし、朔夜さんベッド使って」
起き上がろうとすると、更に強い力で抱きしめる。
耳の裏側でトクントクンと心臓の音が心地よく響いた。
「俺は人の温もりがねぇと眠れねぇんだ。黙ってカイロになっておけ」
――嘘つき。
そんなに温かい体をして、寧ろ冷たいのは私の体の方だ。
人の体の熱さは何人も知っている。私の中を通り過ぎて行った、数々の男達。
けれど、私はこんなに柔らかく温かい体温を知らずに居た。沢山の男に抱かれてきたのに――。