【完】囚われた水槽館~三人の御曹司からの甘美な誘愛~
広い洗面所は、洗面台も二つある。 朔夜さんは歯磨きをしていて、私はお風呂上がりで現在彼からスキンケア講座を受けている。
美容系の会社をしているだけあって、今まで気にしなかった事にもうるさい。
けれど化粧水を私の顔に塗り込む朔夜さんの手のひらはとっても温かくって、擽ったい。とても気持ちが良い。
あの夜触れられたようにそこに熱が産まれていくのが分かった。 恥ずかしくてどうしようもない気持ち。けれどもっと触れて欲しいと願ってしまう。
やましい気持ちでいっぱいの私に対して、朔夜さんは本当に自分の仕事が好きなだけなのだ。 その温度差が何だか切ない。
「何をしている」
突然洗面所の扉が開いて、サッと朔夜さんから身を退く。
そこには仕事が終わった智樹さんがスーツ姿のまま立っていた。
「と、智樹さん、おかえりなさい!」
そんな私の言葉は無視して、智樹さんは朔夜さんの方へ視線を向ける。
「まりあに何をしてる」
「別にあんたが思ってるような事はしてねぇから安心しな。
じゃあな、まりあ。乳液もちゃんと塗っておくようにな」
ベッと舌を出して意地悪な顔をしたかと思えば、朔夜さんは洗面所から出て行こうとした。
智樹さんと肩がぶつかり合いそうになった瞬間、互いに睨み合う。 悠人さんは別として、彼ら二人はお世辞にも仲が良いとは言えなかった。