【完】囚われた水槽館~三人の御曹司からの甘美な誘愛~
「怖いよねー…」
「集まりっていつもこんなピリピリしているの?」
「そうだね。俺達は良くは思われていないからね。
特に智樹さんに関しては仕事も出来るから余計に…
叔父さん達にとっては目の上のたん瘤みたいな存在だとは思うよ?」
朔夜さんは押し黙ったまま、黙々と食事を続けていた。
横屋敷家の争いには無頓着、という訳か。
勿論悠人さんも大学生。 それに大学4年になる彼は、大学院に進みたいらしい。
この兄弟の中で矢面に立っているのは、智樹さんと言った訳だ。
全然和やかではない会食は進み、上品そうなご婦人がちらりと私を見て口を挟む。
「所で智樹さん、この美しい女性は…?
今まで横屋敷の集まりに参加していなかった方ですわよね?」
視線が一気に私へ集中する。
智樹さんは立ち上がり、私を自分の方へ引き寄せた。
そしてにこりと笑顔を崩さぬままハッキリと言ったんだ。
「ご紹介が遅れて申し訳ありません。 こちらは椎名まりあさんです。
僕が結婚をしたいと思っている女性です」
皆一斉にざわめきだし、悠人さんは「え?え?」と私と智樹さんを交互に見やる。
カシャンとフォークを投げ出す音が聴こえた。 朔夜さんは私達の方へは視線を一切向けずに、どこか違う所を見ていた。