【完】囚われた水槽館~三人の御曹司からの甘美な誘愛~
こんな風に紹介されたらどこにも逃げ場なんてないじゃないか。
隣に立っている智樹さんは笑顔を崩さない。 私の戸惑いを無視するように勝手に話を進める。私の気持ちなんて全部無視して。
その時にやっと気づいたのだ。 私は囚われて生きて行かなきゃいけないのだと。
彼はきっと私を愛して等いない。プロポーズをしたのだって、全部自分の為。 私を利用して、横屋敷家の全てを手に入れる為に。
ちょっと前の私ならば、仕方がないと納得していただろう。 私は死のうとした。けれどこの身を助けられたあの日から。自分の感情など持たずに、流れのままに身を任せる。
けれど私の肩を掴む智樹さんに嫌悪感を抱く。どうして私は……
今までずっと自分の中に閉じ込めて来た自分の意思を、解放してしまったのだろう。
知らなければきっと楽だった。 この館に閉じ込められ生きる事にさえ疑問を持たなかっただろう。
だけど、私はあなたに出会ってしまったから――。
「下らない、」
金属音の重なり合う音と同時に掠れた声が室内に響く。
同時に立ち上がったのは、朔夜さんだった。 智樹さんを睨みつけるように…。 そして直ぐ後に私へ視線を向けた。
何が言いたげな視線は、まるでお前はそれでいいのか?と言っているようだった。