【完】囚われた水槽館~三人の御曹司からの甘美な誘愛~
「馬鹿らしい。あんたもここに居る奴ら皆。
勝手にしてくれ」
それだけ言い残し、ダイニングルームをゆっくりと出て行った。
室内はまだ喧騒と驚きに包まれていた。 私はずっと朔夜さんが出て行った扉を見つめていた。
新しき横屋敷の人間。そして春太さんの血を継ぐもの。 その事実だけを残し、様ざまな人間の欲望にまみれた会食は終わった。
坂本さんに訊いたら、朔夜さんはとっくに横屋敷家を後にしたとの事だった。悠人さんに根掘り葉掘り訊かれたが、何も答えられなかった。
私だってまだ混乱している。 会食が終わり、智樹さんは私に優しく言葉を掛けてきたが、何も答える気にはなれなかった。
このままでは、流されて智樹さんと結婚させられてしまう。 私を全く愛していない、私利私欲にまみれた男の花嫁にならなくてはいけない。
心をぐちゃぐちゃにされた気分だった。
―――――
人の居なくなった館。静まり返った館。 私はその日初めて智樹さんの部屋に無理やり連れていかれた。 智樹さんが用意した、真っ白なドレスを着たまま。
智樹さんの部屋には、私の部屋とお揃いの水槽が壁に埋め込まれていた。
「智樹さん…何であんな場所で私と結婚したいなんて…
あれじゃあ婚約者を横屋敷の人間に紹介しているのと同じです。
それに…私を祖父の…母の娘だなんて紹介して…」