【完】囚われた水槽館~三人の御曹司からの甘美な誘愛~
朔夜さんの胸の中、顔を上げたら彼は少し困ったように私の頭を撫でた。
最初は冷たくて怖そうだった不思議な色の瞳が、戸惑う様に揺れている。
「最初から…」
「最初?」
「あの海でお前を初めて見つけた時から」
「あの日、私を助けてくれたのは、朔夜さん?」
死ぬ事を決めた海。全部終わらせようと決めた11月の冬の寒い海。
心ばかり凍えていた。
あの日私は確かに助けられたのだ。 あの海から救い出され、大きな体に抱きしめられ
くちづけをされた。 あれをくちづけなんて言うのは、余りにもおこがましいかもしれないが、薄い唇で、消えかかった私の中に命を吹き込んでくれた人。
’死ぬな’
どうして今その言葉を思い出すんだろう。
どうしてずっと忘れていたんだろう。
その人は、私に’死ぬな’とずっと言い続けてくれた。
それがあなただったなんて、どうして忘れていられたんだろう。
「水の中で気を失っている女は、穢れも知らないような美しい女だった…」
「私が…?」