【完】囚われた水槽館~三人の御曹司からの甘美な誘愛~

「俺いつかお前に言ったよな。
この世界には二つの人間が居るって奪われるか奪うかって。
でもまりあを見ていると、奪われるのも悪くないって思えてきた。
…俺の大切にしている物、誰かに奪われてもいいやって。 お前が居てくれたら俺は幸せだし
横屋敷なんか全て捨てて、小さな街で大きな金を動かす事業をしなくとも…一緒に暮らせるくらいの金があればいいかなーって
全く欲のないお前を見ていると、そう思えるよ」

「私も…朔夜さんを愛しています…」

寝室はとても広かったけれど、その立派な寝室に似つかわしくないシングルベッド。小さなベッドでただただあなたに抱きしめられて眠った日は、産まれて初めて幸せだと感じた日だった。

狭くて窮屈で、優しくてとても温かった。 あなたと居ると私は安心する。


その夜も二人でシングルベッドに入った。朔夜さんはベッドで私を抱きしめるだけで、抱こうとは決してしなかった。

智樹さんが私につけた赤いしるしは、坂本さんが綺麗に消してくれたけれど、それでも彼は私を抱こうとはしない。

一見見えなくなって隠しきれたつもりで居ても、そのしるしは確かにある。見た目では消えて見えたって、心の中まで隠しきれるものなんかじゃない。

真っ暗闇の中で、ぽつりと漏らす。 その言葉を言うまでに時間がかかった。

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