【完】囚われた水槽館~三人の御曹司からの甘美な誘愛~
第八章 閉じ込められていたのは、誰?
第八章 閉じ込められていたのは、誰?
旧横屋敷財閥、当主横屋敷春太が亡くなったのは、まだ冷たい北風が吹きすさぶ2月の終わりだった。
祖父と過ごしたのはほんの四か月余りの短い出来事だった。 それでも唯一この世の中で血の繋がった肉親。 その四か月の中で祖父は私にとても優しかった。私に母を重ねていた。そこに贖罪の気持ちがあったのは分かっていた。それでも優しくしてくれた。
それでも正式に横屋敷家の人間になった訳ではなかった私は、祖父のお通夜も告別式にも出させてもらえなかった。 だから、悠人さんにも朔夜さんにも会う事は許されなかった。携帯さえ取り上げられた。
降り積もって行く想い。
春の始まりの3月に、東京には珍しく雪が降った。
部屋の窓から白い雪を見つめ、彼を想った。
’雪ってまりあみたいだな’
儚くて美しい白い雪が、繊細で壊れそうな朔夜さんの面影を映す。
会いたい。呟いてみても、叶わない。 生まれて初めて知った初恋は、切なさを残したままどこまでも降り注ぐ雪のようで、やがて溶けてなくなる。