【完】囚われた水槽館~三人の御曹司からの甘美な誘愛~
第九章 水鏡に映る兄妹。

第九章 水鏡に映る兄妹。




祖父の遺言の事で話があると智樹さんに告げられた朝。 横屋敷グループの顧問弁護士であると言う中年の男性が、家にやって来て
兄弟だけが招集された。

お茶を運ぶ坂本さんは神妙な面持ちをしていた。 けれどすれ違う時に小声で「大丈夫ですよ」と告げられた。 何故か嫌な予感がした。 智樹さんはずっと無表情のまま私の少し前を歩いていた。

リビングのソファーには既に朔夜さんと悠人さんの姿があった。私を発見した悠人さんが嬉しそうに声を上げた。

「まりあ!会いたかった…!」

無邪気に向けられる笑顔に、曖昧に笑う。 その横に居た朔夜さんは気まずそうにこちらを見つめ、静かに目を伏せる。

こんなに会いたかったのに、そんな顔をさせるばかりしか出来なくて。

「まりあ~…元気だったのぉ…?
全然携帯も繋がらなくなっちゃって…
何か横屋敷家にも俺ら入れてもらえなくてさー…」

「悠人さん、ごめん…」

携帯は、智樹さんに奪われたままだった。 悠人さんと朔夜さんはこの家の人間なのに、入るのさえ許されなかったのだ。

それを思うと切ない気持ちと同時に申し訳ない気持ちでいっぱいになる。

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