【完】囚われた水槽館~三人の御曹司からの甘美な誘愛~
「いえ、それは少し違うと思います。
智樹様自身が横屋敷の遺産の全てを自ら放棄された様に思えます。
智樹様は…まりあ様の幸せを1番に考えて出した結論ではないでしょうか…」
「それが…自分が横屋敷家から出て行くって下らねぇ結論かよ…」
私をソファーへと座らせると、朔夜さんはジャケットを手に取った。
「朔夜…!こんな時にどこに行くって…」
「探しに行くに決まってるだろうが、あいつを…!
自分が犯した罪も償うことなく、下らない幕引きならば絶対にさせない…!」
「探しに行くって…。どこに行ったのかも分からないのに…
闇雲に捜し回ったってどうしようもないじゃんか!もうちょっと冷静になってよ!」
「じゃあ放っておけっつーのかよ?!
分かるか?!
あいつは自分の死に場所を探しに行ったんだぞ?!」
朔夜さんと悠人さんの言葉が激しくぶつかり合う。 坂本さんは何も言えずに、ただその場で茫然と立ち尽くすのみだった。
ソファーから顔を上げると、ぼんやりと霞む視界の中を青白い光が包んでいく。
水槽の中、二匹のネオンテトラが身をよじらせて水の中を駆けていく。 それはまるでアクアドームに閉じ込められた、あの魚とよく似ていた。