【完】囚われた水槽館~三人の御曹司からの甘美な誘愛~

私はあの日、自らの人生の終わりをこの海で選ぼうとした。
救い出してくれたのは……
隣で私を見やる、不思議な瞳の色を持つ人だ。 

東京の海は汚い。 汚い私にはお似合いの死に場所だと思った。 スニーカーで砂浜を一歩一歩踏んでいく。隣に居る朔夜さんの手が私の手に重なり合って、温もりが溶けていく。

「どうして…ここに智樹さんが居るって」

「分からない。けれど私がここで死を望むならば、あの人もきっとここで死にたいと願うはず。
だって私達は血を分けている。」

「なぁ、まりあ…こんな時に言うのも何だと思うけれど
俺は…横屋敷の仕事からは手を引こうと思う。
ずっと考えていたんだ。横屋敷グループに居ながら仕事をするんじゃなくって、独立したいって
その用意をずっと進めて来た。 夏にはパリに住居を移そうと思っている。
そうしたら、まりあ…俺についてきてくれるか?」

朔夜さんは私の顔も見ずに言った。 その視線はただただ黒く染まって行く海を見つめるばかりだった。 だから私もしっかりと前を見据える。

「素敵。パリなんて想像もつかない。」

「日本であった事は全部忘れてさ。  俺はお前と一緒に居たいと思う。一緒に来てほしい。その人生を俺へと預けて欲しい。」

< 216 / 247 >

この作品をシェア

pagetop