【完】囚われた水槽館~三人の御曹司からの甘美な誘愛~

愛して欲しいと願った、私の初恋の人。
きっと幸せだと思う。 彼と共に自分を誰も知らない国へ。
今までの自分を全部捨てて、新しい始まりをこの人と一緒に…。

「私も朔夜さんと一緒に居たい。居たい…けど…」

握り締めた手が、少しだけ震えていた。

これは私が震えているのか、朔夜さんが震えているのか、どちらかは分からない。もしかしたらどちらも震えていたのかもしれない。

この手を離さずに生きて行く。 求めていた未来が、やっと手に入った。 そう思っていたのに…

「朔夜!まりあ!あっち!人影が見える…!」

暗い海の中を漂う人影を見つけた瞬間、私はその手を離してしまった。 ごく自然に解き放たれた手の先、走り出していた。

あの日の私のようにゆっくりと海の先を進んでいく背中を、必死で追いかける私は生きていた――。

波にもまれ、砂浜に足が取られようとも、ただただ前へ前へ

だからその背中を掴み振り返ったあなたの瞳を見た時、それはまるで水鏡に映った月のように同じだったのだ。 可笑しくなるくらい自分と重なった、孤独に似ている色。

私とあなたはどこか似ている。 知らない筈なのに、あなたには懐かしい気持ちがいつでもこみ上げてきた。

鏡に映った自分のように、大切にしたかったのに。 私達はどこで道を間違えてしまったの?

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