【完】囚われた水槽館~三人の御曹司からの甘美な誘愛~
最終章 深く沈む水の底、愛のくちづけを。

最終章 深く沈む水の底、愛のくちづけを。




8月の成田空港にまた一つ自分の進むべき道を決めた人が居た。

凛と立つ姿。
出会った頃より少しだけ髪が伸びた。 茶色の少しパーマのかかった柔らかい髪が、風にほんのりと靡く。

いつだって私の目を見て話してくれた人。透き通った不思議な目の色を持つ人。 初めはその強い眼差しに見据えられるのが、ちょっぴり怖かった。


過ごしていく過程の中で、不器用な中に隠された優しさがあるのを知った。 まりあのせいじゃない。私の罪を軽くしてくれた。その言葉は魔法のようにスッと私の中に入ってきて、抱えて来た想いがいつしか消化していった。

感謝しかなかった。 こんな私と一緒に居たいといってくれた事。

あなたの持つ柔らかさは、私の求めていた未来が全て詰まっていた。
けれども私は、あの日あの海であなたの手を離してしまった。

「本当~に行っちゃうんだねぇ~…朔夜…」

私の隣で悠人さんは今にも泣きだしそうだった。
それとは対称的に朔夜さんはどこかすっきりとした顔をしている。

「んな顔すんなって。フランスなんて近いよ。」

「近くないよ!12時間だよ?!1日の半分だよ…
遠すぎるよ…ね、まりあ?」

涙目になっている悠人さんは、私の手をぎゅっと握り寂しそうな眼差しを朔夜さんへと送る。

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