【完】囚われた水槽館~三人の御曹司からの甘美な誘愛~
「確かに、寂しい…。」
悠人さんの手をぎゅっと握り返すと、だよね?!と彼が私に同意を求める。
朔夜さんはほんの少し眉を下げて、目を細めながら私達を交互に見やった。
「…でも朔夜さんが決めた道なら応援しますけどね。」
「でもでも…やっぱり寂しいじゃーん…。俺長期休みはフランスで過ごそうっかなぁー…」
「げぇ、お前は来るなよ」
「朔夜ひどーい。可愛い弟がせっかく寂しがりやのにーちゃんの所に遊びに行ってやろーつってんのに…」
「だってお前来るとうるさそうなんだもん。マジでごめんだね。
まりあなら大歓迎だけどね」
「ひどッ。じゃあ、まりあ一緒に行こう?旅費は俺が出すし」
「だからお前が来る事自体ウザいんだってば、分かれ」
朔夜さんがフランス行きを決めた夏は、例年より冷夏だった。
日本でしていた仕事のコネでオートクチュールのアトリエに入り昔からの夢であったデザインの仕事を始める。
とはいえ、朔夜さんいわく実力が認められるまでは、ほぼ無給らしい。厳しい世界ではある。それでも今の自分の地位の全てを捨てて、夢を追う姿は朔夜さんらしいといえば彼らしい。