【完】囚われた水槽館~三人の御曹司からの甘美な誘愛~
搭乗ゲートの前でしばしの沈黙。
きっと皆寂しい気持ちは一緒だった。 憎まれ口を叩いていたとしても。
その沈黙を打ち破る様に、フランス行きのアナウンスが空港内で告げられる。 私達が生きる時間は、待ってはくれない。
アナウンスが流れると同時に、悠人さんは腕で涙を拭って「後は二人で!」と気を使ってくれたようだ。
「朔夜、電話もメールもいつでもしてきなよ?ホームシックになったら24時間受け付けてるからね!」
「お前にだけは連絡しねぇ」
「最後まで酷い!…でも元気でね?たまには日本に帰って来てよ?」
「おう。お前も大学院で頑張れよ。…まりあの事は頼むな…」
「任せてよ!じゃあまりあ!俺その辺でお茶してる!」そう言って朔夜さんの肩を小突くと、手を振り悠人さんは小走りでその場を去って行く。
取り残された私と朔夜さんは向き合い、彼の口から小さなため息が漏れる。
「たくッ…気を利かせるつもりならば最初から見送りについてくるなっつー話だよな?」
私を見つめるグリーンの瞳が優しく揺れた。
ひと時も目を離したくなかった。 もう私はあなたの視線から、目を逸らさない。
あなたを形作る物。隅の隅まで
最後まで全部覚えておきたいから。忘れたくないから。