【完】囚われた水槽館~三人の御曹司からの甘美な誘愛~
「悠人さんだって寂しいんですよ…。 だってずっと一緒に居たんだから」
「だから12時間だっつの。永遠の別れつー訳でもねーのに」
「それでもやっぱり寂しいよ…。会いたいと思った時にすぐに会えないんだから…」
悠人さんの手前、ずっと泣くのを我慢していた。 それに私が泣くのは何か違う。
だって私はこの手を離したんだから。 選び取らなかった未来が、私をどこへ連れて行くのかはまだ見当もつかない。
朔夜さんについてきて欲しい、と言われた。 一緒に新しい人生を、新たな場所で始めようと言われた。 今までの人生を全てリセットして、この人の胸に飛び込めたなら幸せだったのに、その未来をどうしても選び取れなかった。
あの日、あの時、無意識に彼の手を離したのが全ての答えだったのだと思う。
「まりあ…」
耳を擽るような、ちょっぴりしゃがれた声。優しく鼓膜の奥に響いていく。 この声を聴くのも、もう…。
「寂しくなったらいつでも会いに来ていいからな」
その言葉に喉の奥が熱くなって、堪えていた涙が今にも零れ落ちそうだった。
「…もう寂しいし…」
「なら、一緒に来ればいいのに、ね。」