【完】囚われた水槽館~三人の御曹司からの甘美な誘愛~
目を閉じると、浮かび上がる花の都。
きっと朔夜さんがこれから行く場所は、とても美しいだろう。
日本を飛び越えて、広い広い世界へ駆けていく。 私の手の届かない所へ行ってしまう。
私は、行けない。 独りぼっちには出来ない人が居る。 残してはおけない人が居た。
「でも、待ってるよ。」
「待たなくていいよ…。」
「ずっと待ってる。」
「だから待たなくていい…!」
これ以上ここに居たら、涙が零れ落ちて止まらなくなってしまいそうだった。
一瞬一瞬を忘れたくないから、一秒でも多くあなたの顔を目に焼き付けておきたいのに
その瞳に見つめられたら、涙が止まらなくなってしまう。 待つなんて言わないで、未来の保証も出来ない私に――。
ふいに朔夜さんの甘い香りに体いっぱい包まれていく。
抱きしめられた体は、同じ位熱かった。
「それでも待つ」耳元で囁かれた言葉が、とても甘くてこのまま時間を止めてしまえばいいのに、と目を閉じながら思った。
このまま、この熱に流されていたい。