【完】囚われた水槽館~三人の御曹司からの甘美な誘愛~

「愛してる、まりあ――」

急かすように二度目のアナウンスが空港内を流れる。 私の体をそっと離した朔夜さんは、顔を覗き込んで優しいキスを一度だけしてくれた。

そしてゲートを潜り抜けるまで、一度もこちらを振り返らなかった。
その後ろ姿でさえ、目に焼き付けておきたかったのに視界は歪んでいる。

ぽろりと涙が零れ落ちた時、やっと視界がクリアになった。 その先に、もう朔夜さんの姿は無かった。

唇にその熱を残したまま、人目もはばからずにその場に座り込み声を上げて泣いた。

「まりあ…」

「くッ…。う…う…」

「まりあ~…泣かないでよぉ…。俺まで悲しくなっちゃう…
まりあってばぁ~…」

置いていかないで。一緒に行きたい。 どうしても言えなかった言葉。

泣いて縋り付けば、困らせる事は分かっていた。 だからこの涙は見られたくなかった。

愛している。そんな言葉さえ最後まで言えなかった。
自分で決めた事なのに、どうしてこんなにも涙が止まらないの?

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