【完】囚われた水槽館~三人の御曹司からの甘美な誘愛~
「一つだけ聞いてもいいですか?」
「何だよ」
振り向いた彼はやっぱりかったるそうな顔をしていた。
「綺麗な、瞳ですね。」
そう言うと、彼は片手でバッと自分の瞳を隠した。
「ハーフですか?」
「違う。顔も覚えちゃいないが、両親ともれっきとした日本人らしい。どっか遠い繋がりでもしかしたらそういう血も混じってるかも知れねぇけど」
「茶色かなと思ったらよく見たら緑にも見える。
その瞳の色を持つ人間は世界でも2パーセントしか居ないとか
とても美しい瞳です。」
「学はねぇくせに余計な事は知ってんだな。
この目に関しては余り好きじゃねぇんだ。訊きたい事つーのはそれか?」
こくんと頷くと、彼は呆れたようにその不思議な瞳を瞬かせた。
「お前変わった奴だな。
大人しいかと思えば、気が強ぇ所もあって
自分の意思がないように見せかけて、何かを強く求めているようにも見える」
私は愛を求めていた。きっとずっと。誰かに必要とされる居場所を。
手に入らない程、人は渇望する生き物だ。
朔夜さんの言う通り、智樹さんは私が正当な継承者であるだけの理由で私に親切にしてくれているのかもしれない。
それでも良かった。 全部がフェイクでも構わなかった。
居場所が欲しかった。
例えそれが閉じ込められたこの水槽館の中でも――
息苦しくとも生きている事を実感出来るのであれば、場所は厭わなかったのかもしれない。