【完】囚われた水槽館~三人の御曹司からの甘美な誘愛~
都心から少し離れた場所にあるこの屋敷。私には横屋敷グループがどれだけの会社かなんて分からないけれど、彼らが相当資産家なのはどこからどう見たって明確である。
三兄弟にはそれぞれの生活がある。屋敷には居たり居なかったり。
1番この屋敷に出入りしているのは智樹さんで、1番見かけないのは悠人さんだった。
悠人さんは大学生だと言ったけれど、智樹さんは一応この横屋敷グループのトップ。祖父が病院に入院しているからではあるけれど。
毎日忙しそうに色々な場所に飛び回っている。 朔夜さんも朔夜さんで横屋敷グループの傘化にある会社の一応肩書は社長らしい。屋敷内では滅多に見かけないが。
日々は平凡に過ぎ去っている様には、見えた。
水面下で何が動いているのかなんて私には知ったこっちゃないけれど。
こんな大きなグループを手にしても持てあましてしまうだけだ。 遺産を相続したって、面倒ごとに巻き込まれるのは御免だ。
自分の気持ちの整理がついたら、遺産は放棄してこの屋敷を出て行こうと決めていた。 そしてきっとまた元の生産性のない生活に戻るだけ。ただそれだけだ。
きっとここで心身ともに回復したとしても、いつか何かのはずみで私はまた自分の命を簡単に投げ出すのだろう。
そしてそういった人生が自分にはお似合いなのだとも思う。悲観している訳ではない。悲しい位冷静だった。