【完】囚われた水槽館~三人の御曹司からの甘美な誘愛~
「まりあ様が来てから、よくいらっしゃるようになりましたね」
坂本さんは張り付けられた笑顔でにこりと私に微笑んでいた。 私と横屋敷家の関係を彼女は一切探ったりはしない。 けれど時折じとりと纏わりつく様な視線はいつも何かを伺っていた。
一旦自分の部屋に戻り、コートをクローゼットにかける。
ふわふわのベッドに腰をおろした途端、やっと肩の力が抜けた様に安心する。
智樹さんの’綺麗’を真に受けた訳じゃあないけれど、ドレッサーに用意されたメイク用品一式は有難く使わせて貰う事にした。
きっと祖父も母に寄せた私の方が喜んでくれると思ったから。 少しだけ自室で休んでから、ゆっくりと立ち上がりリビングへと向かった。
「まりあーッ!」
「こんばんは、悠人さん」
相変わらずこの家で1番人懐っこい悠人さん。くるくると動く可愛らしい表情。私がリビングへ顔を出すと、ソファーから立ち上がりぎゅっと抱き着く。
年上とは、思えない。何となく弟が出来た気分だ。
「悠人さんなんて他人行儀で呼ばないでよぉーッ。
俺とまりあが1番歳が近いんだからさぁーッ」
「あはは…」
何となく苦笑い。 こういう明るいタイプの人間は今まで周りで余りいなかった。ましてやこんな暗い私に好意を抱いてくれる人なんて。