【完】囚われた水槽館~三人の御曹司からの甘美な誘愛~
この人は本当は優しい。
悠人さんは屈託のない笑顔を浮かべて、実は周りに気遣う人。
じゃあ、あなたは一体どんな人だった? 私はあなたの事を知りたいと思う。
あなたの笑顔はとても優しいけれど、どこか窮屈で、歪だ。
―――――
「あ。」
「お。」
朔夜さんに送って貰ってお風呂に入ると、ばったりと智樹さんに会ってしまった。
21時を過ぎていた。それでも智樹さんのご帰宅には早い方だ。
ちょっと疲れた顔をした智樹さんは、それでも穏やかな笑顔を作る。 これはもうどこまでも染みついてしまったこの人の癖かもしれない。
「朔夜達と水族館今日だっけか。楽しかった?」
「うん、とっても楽しかった。悠人さんにイルカのぬいぐるみ買ってもらいました。
朔夜さんはすっごくつまらなそうだったけれど」
「そうか、それは良かった。」
ここの館に来てから、ずっと心は穏やかでいつでも笑えている気がした。 それは悠人さんのお陰で朔夜さんのお陰で、智樹さんのお陰だ。
智樹さんだけは、ほぼこの館に帰宅する。忙しいのにいつだって私を気にかけてくれた。
でも私にこの人の本質は見えない。
「智樹さんも来れたら良かったのに」
「今度はまりあと二人で行きたいな。 今からお風呂に入るよ。
お風呂から上がったら少しだけ話そうか」
「はい。」