【完】囚われた水槽館~三人の御曹司からの甘美な誘愛~
「水槽のある部屋で待ってて。
場所分かる?」
「えぇ。大体この屋敷の構図は掴めてきました。」
「それは良かった。 お風呂から上がったら直ぐに行くよ。」
四方を水槽に囲まれているこの部屋は、暖房が入っているのにどこか冷たく寒い。
魚達が優雅に泳ぐ水槽のに囲まれていると、閉じ込められているのが魚ではなく自分の方だった錯覚さえ起こす。
中央のテーブルに頬を付けるとじんわりと冷たい。 カラフルな魚達はこちらなんて見向きもせずに自分達の海を泳ぐだけだ。
コンコン、とノックが鳴って「はい」と返事をするともう一回コンコンと扉を叩く音が響いた。
「ごめん、ごめん、両手が塞がってて。」
「あ。すいません。どうぞ」
お風呂上がりの少し濡れた髪。 細めた目で穏やかに笑う彼の手にはティーカップとポットが乗ったトレイがあった。
どことなく甘い香りが広がって行く。
「いい匂いですね」
「うん、イギリスの人気店から取り寄せた紅茶らしい。バニラとキャラメル。」
椅子に座った智樹さんが紅茶をカップに注ぐ。甘い匂いが部屋中を充満する。
「どうぞ」
「ありがとうございます。わぁー…香りがいい。美味しい」
「女の子が喜びそうな味だね」
「女の子が喜びそうな物を用意するのが上手ですよね、智樹さんは」