桜花の剣士
吹雪が止んだ後、景色は元の通りへと戻っていた。男性は驚く小町に笑うことなく言った。

「夕暮れは妖怪が活動を始める時間だ。今回は運良く助けられたが……次は人の多いところを通って帰れ」

「は、はい!!」

本物の軍人のような威圧的な声に、小町はびくりと肩を震わせて返事をする。すると男性の姿は雪に包まれて一瞬で消えてしまったのだ。

「そんなことがあったんですか?」

「ええ。とても怖かったわ」

怯える小町を見て、流華は小町が嘘を言っているとは感じなかった。しかし、妖怪の存在がいたなど非現実的すぎる。

「怖いといえば、今日は礼儀作法の授業がありますわ」

流華は怖いことで有名な先生が講師をする授業内容を出し、何とか話を誤魔化すことにした。



今日も淑女としての授業を終え、流華はお屋敷へと帰ることにした。小町にカフェに行かないかと誘われたものの、今日はあいにく早く帰ってくるよう言われているのだ。

「まだ日は登っていますし、大丈夫ですよね」
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