桜花の剣士
流華はひとりごとを呟き、人通りの少ない裏路地を見つめる。裏路地は表の通りとは違い薄暗くて不気味だが、お屋敷に帰るには近道になるのだ。

「入りましょう」

勇気を出して流華は裏路地へと入っていく。裏路地は不気味だがこの時、流華の頭から小町の今朝話していたことは抜けていた。

裏路地を流華は進んでいく。急に現れた猫に驚いたりはしたものの、順調に道を進んでいた。

「あと少しで通りに出ますね!」

早くこの不気味な裏路地から出てしまおう、流華がそう思いながら歩く足を早めると「ヴヴ……」と人間のものとは思えない声が聞こえてきた。

「な、何ですか?」

不安になり流華が辺りを見回していると、強い殺気を感じた。咄嗟に流華は地面に落ちていた長めの棒を拾う。

「ガウッ!!」

暗闇の中から何者かが迫ってくる。流華が咄嗟に自分の身を守ると、目を見開き、恐ろしい形相をした人が流華の持っている棒に噛み付き、威嚇するように唸っていた。
< 4 / 9 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop