転生令嬢はご隠居生活を送りたい! 王太子殿下との婚約はご遠慮させていただきたく
身体を固くし、襲撃に備えようとする。一番得意なのは、隠れることだけれど、逃げるための時間を稼ぐくらいならなんとかできる。
 けれど、エドアルトはけろりとして言い放った。

「あれは、王宮の警備兵だ」
「……は?」
「あんなに派手に悲鳴を上げたんだ。王宮の警備兵が駆けつけなくてどうする」
「は、は、派手な悲鳴って……!」

 アイリーシャは声を上げた。
たしかに、派手に悲鳴を上げた。
 その悲鳴を聞きつけて、王宮の警備兵が駆けつけてきたのは、職務に忠実で実にけっこうなことだ。
だが、ずっと囲んでいる必要もないではないか。

「なっ……なっ……」

 アイリーシャは、言葉を失ってしまった。

「……それに、俺の警護もしているからな」
「ソ、ソウデスネ……」

 そう言えば、今腕を貸してくれているのは王太子殿下だった。
 首に剣を突き付けられるという経験をしたばかりで、すっかり頭から飛んでいたけれど。
そしてもうひとつ。アイリーシャはとんでもないことを忘れていた。

(……し、しまった……! 殿下と一緒じゃ目立つことこの上ないじゃないの……!)

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