転生令嬢はご隠居生活を送りたい! 王太子殿下との婚約はご遠慮させていただきたく
 今日の主役であるエドアルト。
彼の腕を借りてテラスから中に戻ってくる。
 そんなことをしたら目立つに決まっている。というか、目立たずにいたいのなら、今すぐ彼の腕を振りほどいて逃げ出すべきだ。

「殿下、そろそろ……両親のところに戻らないといけませんので」

 王と王妃が入室したら、両親と共に挨拶をしなければならない。笑顔で、エドアルトから離れようとするけれど、彼は両手でアイリーシャの逃走を封じ込めた。

「また、あとで」
「は、はい……!」

 あとでと念を押してから、ようやく解放される。

(ものすごく疲れた……!)

 なんとかエドアルトと一緒に中に戻るのだけは免れたが、アイリーシャは、ぐったりとしてしまった。
 ここに来てからまだ一時間程度のはずだが、この一時間でいらない経験を山ほどしてしまった気がする。
 同年代の令嬢に喧嘩を売られたりとか、王太子殿下に、首に剣を突き付けられたりとか。

「アイリーシャ、お前、どこに行っていたんだ?」

 両親の顔を見て、ほっとした。

「ちょっと、外に涼みに行っていただけ」

 なんでもない様子を装って、肩をすくめる。

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