転生令嬢はご隠居生活を送りたい! 王太子殿下との婚約はご遠慮させていただきたく
「ほら、殿下にご挨拶に行かないと……」

 エドアルトもいつの間にか中に戻ってきたようだ。

(もう、顔は合わせたけどね……)

 なんて言えるはずもなく、両親に連れられて国王夫妻と王太子のところまで赴く。
マナー教師に全力で叩き込まれた美しい仕草を思い出しながら、アイリーシャは頭を垂れた。その仕草の美しさに、集まっている人達の間からほぅっと感嘆の声が漏れる。

「大きくなったな、アイリーシャ。修行を終えたとミカルが言っていた」
「ありがとうございます。ですが……まだまだ修行が必要です」

 そう答えたのも、自分が魔術師としては秀才どまりであるのを知っているから。
 身に秘めた魔力の多さと発動する魔力の正確さで、大多数の魔術師よりは優れた戦果を挙げるであろうことも知っているけれど、天才には遠く及ばない。
――それに。
アイリーシャが本領を発揮するのは、神聖魔術を覚えてからだ。今は、ただ"ちょっと優秀"な魔術師でしかない。

「王立魔術研究所に入るのでしょう? 時々はこちらに顔を出してね」
「ありがとうございます、王妃陛下」

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