転生令嬢はご隠居生活を送りたい! 王太子殿下との婚約はご遠慮させていただきたく
 ぴしゃりとエドアルトは、彼女の言葉をはねつけた。

(うわぁ……)

 それを見ていたアイリーシャはちょっと引いた。
 たしかに、これは絶氷だ。もともとの顔立ちが整っているだけに、じろりと見られるとものすごく怖い。
 壁に張りつくようにして、完全に空気と化していたアイリーシャも怖かったのだから、当事者はさぞ恐怖を覚えたことだろう。

(……場所、移動しよ)

 兄が待っているし、この場にいつまでもとどまっていたくない。
 この間は気づかれたけれど、他の人も同じ場にいるからエドアルトはアイリーシャに気付かないだろう。
 なんていう期待は、あっさり打ち砕かれた。

「アイリーシャ嬢、ここにいたのか」
「……へ?」

 思わず間の抜けた声が漏れた。
 やっぱり、気づかれた。他の人に紛れていたから大丈夫だと思っていたのに。

「え? アイリーシャ様、いつからそこにいたんですか?」

 アイリーシャを話のネタにしていたということもあって、所員達は気まずかったようだ。アイリーシャは笑ってごまかそうとした。

「い、今、たまたま通りがかったところで……兄の部屋で一緒に食事をするんです」

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