転生令嬢はご隠居生活を送りたい! 王太子殿下との婚約はご遠慮させていただきたく
 そんなことを言われても。
 たしかに、今後も人前に出る時には、全力で身をひそめるつもりであるけれど。

「人の目にさらされるのが嫌になるというのはよくわかる。魔力暴発の件だろう」

 あの一件、エドアルトの耳にまで届いていたのか。まあ、あれだけ騒がれていたのなら当然か。

「――あの事件はまったく関係ありませんよ?」
「関係ない?」
「ええ、まあ」

 どちらかと言えば、前世での経験が問題なわけで。だが、そんなことをエドアルトに言うわけにもいかなかった。

「たしかに、人前に出るのは好みませんが……それは、殿下も同じでしょう?」

 たった今、見かけたばかりの職員に対する対応。あれを見ていれば、よくわかる。

「そう……かな」

 エドアルトは、考え込む表情になった。

「では、俺達は友人になれるだろうか」
「友人、ですか……」

 アイリーシャは固まってしまったけれど、エドアルトの友人になることには同意した。
 花をもらっておいて、断るなんてできるはずもない。
 自然とエドアルトと並んで歩く形になる。

(なんで、殿下には見つかっちゃうかなぁ……)

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