転生令嬢はご隠居生活を送りたい! 王太子殿下との婚約はご遠慮させていただきたく
 新しい首輪は、水晶がはめられている分、今までより少しばかり重い。部屋に戻って、首輪を付け替えると、重さが不愉快だったようで、首を左右に振って拒まれた。

「だめだってば。新しい首輪をつけないと、あなたが困っている時に助けに行けないでしょう。この首輪は、ミカル先生に作り方を教えてもらったんですからね?」

 時々、ルルにはこちらの言葉が通じているのではないかと思うことがある。今もアイリーシャの言葉が通じたようで、首を振るのをやめた。
 新しい首輪の色も赤だ。ルルの黒い毛並みに赤がよく映える。

「うん、よく似合っている。可愛い」

 そう言うと、小さく尾が揺れる。
 機嫌を直してくれただろうか。アイリーシャが手を差し出すと、ルルはそこに頭をこすりつけた。

「じゃあ行ってくるからね。いい子に待っているのよ」
「ワンッ」

 どこまでアイリーシャの言葉が通じているかはわからない。また脱走しても、追跡装置があるから大丈夫だろうと言い聞かせて部屋を出た。
 今年も、庭園には多数の招待客が待っていた。

(十年前は、何もわかっていなかったなぁ……)

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