転生令嬢はご隠居生活を送りたい! 王太子殿下との婚約はご遠慮させていただきたく
 記憶がよみがえったのは、ちょうど十年前のことだった。誕生日の当日記憶が戻って、混乱している間に両親に招待客達と引き合わされた。

「お誕生日、おめでとうございます。アイリーシャ様」
「こちらでお誕生日をお祝いするのは、久しぶりですものね」

 両親の招いた客人にまずは挨拶をして回る。アイリーシャが将来困らないための布石だ。
それから、兄の友人達。縁談を探そうとなった時、嫁ぎ先として名が挙がってくるのはこのあたりだからだ。
 前世でも、同じようなことを何度もやらされた。
 違うのは、前世の両親は愛美の意志なんてまったく考えていなかったこと。公爵夫妻は、アイリーシャが好きになれる相手を探せばいいと言ってくれている。

(お父様とお母様の気持ちは嬉しいけれど……相手はそう思っていないみたい)

 公爵家の娘なので、王太子妃候補の一人であることは周知の事実だ。だが、今のところ、エドアルトが積極的に相手を探しているという話は出ていない。
< 148 / 284 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop