転生令嬢はご隠居生活を送りたい! 王太子殿下との婚約はご遠慮させていただきたく
 繋いだ手に少しだけ力を込めて、エドアルトの顔を見上げてみる。こちらを見下ろした彼の顔を見ていたら、なんだかすごく安心した。

(少し、街の中を歩くだけ)

 甘いのかもしれないと、耳の奥で声がする。その声は聞こえないふりをして、エドアルトの手を引いて歩き始めた。
 行方不明になったと思われるのも問題なので、通りすがりの屋台で紙とペンを借り、その場で手紙をしたためる。王宮の門番に、エドアルト自身の手でそれを託してから、改めて散策に向かった。

「そう言えば、ラベンダーの色を身に着けるんだったか」
「そうですよ。私は、今日はこれです」

 髪に結んでいるのは、ラベンダー色のリボン。エドアルトの方は、胸ポケットのチーフだ。

「ルルは、赤い首輪だけだな」
「留守番の予定でしたから」

 ルルの首輪は、赤くて目立つ。
 エドアルトは思案の表情になったけれど、屋台に並べられているアクセサリーに目を止めた。

「ルル、これはどうだ?」

 真顔でルルに問いかけている。ルルが鼻を鳴らした。

「気に入らないか。では、これは?」

 別のアクセサリーをまたルルに指さしてみる。今度は小さく鳴いた。

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